日々の多忙な業務、人間関係、重くのしかかる命への責任やプレッシャー‥
そんな中、ふと「このまま看護師として働いていくのかな‥?」と思い悩むことは誰にでもあります。
私自身病棟でがむしゃらに働いていた頃は、帰り道にふと今後の事を考えたりしながら帰路についていた時もあったなと思い返します。
そんなとき「看護師以外の仕事に転職してみようかな?」「忙しい病院は辞めて、自分らしくいられる職場に行きたい」と考える人もいるでしょう。
では実際に看護師から他職種への転職は上手くいくものなのでしょうか?
ということで今回は、看護師から他職種へ転職するメリットやデメリットと併せて、他職種への転職を成功させるコツを皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
看護師から他職種への転職を考える
他職種への転職をしたいという看護師は結構いると思います。
そこで、看護師から他職種への転職を成功させるコツについて触れる前に「看護師から他職種への転職」について考えてみましょう。
看護師の資格があるのに他職種へ転職を希望する理由とは?
看護師は専門性が高く、国家資格を有する仕事です。
それなのになぜ「看護師ではなく他職種への転職をしたい!」と考えるのでしょうか?
ここではどんな理由で他職種への転職を検討するのか、日本看護協会のデータから見てみましょう。
退職理由 | 割合 |
---|---|
出産・育児に専念する為 | 25.4% |
結婚 | 19.1% |
転居 | 10.0% |
配偶者の転勤 | 9.1% |
家族の介護 | 6.7% |
健康上の理由 | 6.6% |
他分野への興味 | 5.7% |
残業が多く休めない | 4.2% |
看護の業務内容への不満 | 4.1% |
他にも様々な理由がありましたが、主な転職理由はこのようなものでした。
この表からは「看護師としての責務や業務の辛さから離れたい」といった看護師という仕事自体が重荷になり転職を検討している人と、結婚や出産・育児、配偶者の転勤、家族の介護など、プライベートな理由により他職種への転職を検討している看護師に二分されている事が分かります。
看護師から他職種への転職は大丈夫?
結論からはっきり言ってしまうと、大丈夫です。
私の周囲にも他職種へ転職した看護師が二人いました。
一人はパン屋さん、もう一人は保険のセールスマンになったのですが、二人とも看護師という職業に固執せず、自由な発想と行動力を持った方々でした。
大丈夫、とは言いましたが、あくまでも他職種への転職が無理ではないということ。自分が理想とするワークライフバランスや給与水準に達しない可能性はあります。
しかし年収は下がってしまったものの、看護師とは無縁の仕事について生き生きと働いている人もいますし、逆に看護師の資格や経験を活かして他職種として働く方もいます。
看護師から他職種への転職は決して難しいことではない、といえそうです。
看護師から他職種へ転職した人が多い職業とは?
他職種への転職で看護師経験を必要としない業種としては、一般事務、アパレル業界、カフェなどの飲食店などが挙げられます。
やはり夜勤がないのが一般職種の最大の魅力でしょう。日勤業務だけで残業時間が少なめ、服など自分の好きな事に打ち込める時間というのは人気の理由のようです。
また対人関係でも看護師時代に培ったコミュニケーションスキルを存分に発揮できるので、特別なスキルを必要としないのも理由の一つでしょう。
ただ、全体的にどの職種へ転職してもやはり給与は看護師時代よりも下がってしまう傾向にあります。
反対に看護師の資格や経験を基に看護師以外の職種へ転職した業種としては、一般企業の保健師、保健室の先生、美容業界、イベント/ツアーナースなどが挙がりました。
こちらもやはり日勤業務だけという職種が多く、ワークライフバランスがとりやすいという理由が圧倒的。
また子供が好きという方は保健の先生や保育園などで、あるいは美容に興味があるなら美容クリニックで働くなど「自分の好きな分野」を活かした転職をしている看護師もいます。
また、イベントやツアーナースは基本的には待機業務が中心で、緊張感が常に走っている雰囲気はなく色々な場所へ行くことができ、自由感があるとの理由で人気です。
看護師が他職種への転職をするメリットとは?
次に看護師から他職種へ転職するメリットを見ていきましょう。
転職のメリットは大きく分けて3つあります。
- 肉体的な負担が減る
- 精神的負担が減る
- 休みが取りやすく、プライベートを充実させやすい
ひとつずつ理由を見てみましょう。
肉体的な負担が減る
職場にもよりますが、基本的に看護師は夜勤や長時間の残業、不規則な生活など身体的な負担が非常に大きくなります。
私自身、病院勤務時代は常に時間に追われて思うように身体を休めることができなかったと思います。
病院を辞めて2か月ほどフリーランスとして働いていた時に、初めて「人間らしい生活をしているな」と心から実感した記憶があります。
朝起きて食事をゆっくりと摂り、夜眠れるという当たり前のことがようやくできるようになったことで、自炊をしたり、部屋を片付けたりと自分の生活に目を向けられるようになり「余裕って大切」だと思いました。
病院業務もそれなりに充実感を持って従事していましたが、知らず知らずのうちにやはりとても負担に感じていたのでしょう。
精神的負担が減る
日々の多忙な業務に追われ、自分の事を顧みる余裕がないまま時間だけが過ぎていく‥。
看護師として働いていると、こう思ってしまうことが誰しもあると思います。
患者さんの命を守らなければいけないという過度のプレッシャー、医者からの指示に的確に対応しなければならない責任感、看護師として成長していかないといけないという重圧感など精神的な負担はとても大きいものです。
不規則な生活、肉体的な負担もある中でこのような精神的負担も重くのしかかるわけですから、看護師を辞めたいと思ってしまうのも無理はないことだと思います。
実際に私は病院で働く事を辞めて、自分に目が向くようになりとても穏やかに過ごせているなと感じます。
そのおかげか仕事で関わる相手や家族にも優しくなれたような気も。振り返ると、病院時代は余裕がなく他人にも家族にもどこか冷たい態度や考え方をしていました。
休みが取りやすくプライベートを充実させやすい
病院勤務の看護師だと土日祝日やGWや正月といった行事も関係なく出勤となる場合が多いでしょう。
病院は24時間365日絶えず稼働していますから仕方のないこと。分かっていて就職したとはいえ、やはり看護師も一人の人間ですからたまには連休も取りたいし、家族や恋人と都合を合わせて遊びたいですよね。
私もカレンダー通りの他職種の友人と全く都合が合わず、一緒に旅行に行くのも毎回大変でした。
また、2日の連休を貰うだけでも職場や先輩への挨拶が欠かせないなど、希望休をもらうことに不随する細かなやりとりや人間関係にも疲弊していました。
全く希望の休みや連休が取れないということではないですが、言い出しにくい、職場に気を遣うという雰囲気がどうしてもあります。
一方で、病院勤務や看護師の仕事から離れてみると、休みが取りやすい事に気づきます。
そしてGWなどの混雑を避けて休みを取りたい場合はその間は働けたりもするので、自分の希望する形でオン・オフが決められることは好都合でしたし、そのことによるストレスが半減しました。
友人や家族、恋人との時間、そしてなにより自分のために使える時間が生まれたので、私は「看護師から一度離れてみて良かったな」と実感しました。
看護師が他職種への転職をするデメリット
次に、看護師が他職種への転職をするデメリットも見てみましょう。
デメリットは大きく分けて3つあります。
収入が減るケースが多い
看護師の給料は比較的同世代の社会人よりも恵まれている場合が多いです。
その一方で特に資格がなくても誰でも始めやすい事務職やアパレル関係などは看護師ほどの給料は見込めません。
他職種への転職後に「やっぱり生活水準は下げられないと感じた」「やりがいを感じられなかった」というリアルな意見も聞かれますので、覚悟を持って転職した方が良さそう。
他職種に転職する場合は年収がどれくらい下がるのかを十分に想定し、場合によってはライフスタイルを変える必要も出てくるでしょう。
転職する他職種の仕事が続くか分からない
これはこれからの時代に一番のデメリットになる可能性があります。
社会状況が変わることによる失業や会社の倒産、AIの発展などにより現在の就業状況が大きく変化しようとしています。
このような時代の流れにより、正社員として他職種に転職できたとしても失業してしまう可能性が潜在的にあるということになります。
その一方で看護師という職業は決してなくなることはないでしょう。
看護業務は相手(患者さんや医者、同僚など)がいて初めて成り立つ仕事。現場の仕事は絶対にリモートワークにはできませんし、人間が病気にならないという将来はなく、誰しもが一度は医療機関にお世話になるはずです。
看護師には就職先が沢山ありますし、経済的な不安も他の一般職よりは少ないと思われます。
看護師としての経験が無駄になるのでは?という不安に駆られる
必死に努力して取った国家資格、懸命に患者さんのために働いてきた看護師としての経験や知識‥。どれもこれもあなたがこれまで頑張ってきた証であり、財産ですよね。
実際、現実問題として看護師としての経験や給料水準、やりがいなどをなかなか捨てられず悩むケースが非常に多く見られます。
その結果、慣れた環境である医療機関に看護師として復帰する人が非常に多いようです。
看護師の資格を活かした転職先もある
必死に資格を取り、これまで看護師として経験を積みながら日々頑張ってきたのですから、それらを活かしながら看護師以外の仕事に就くという選択肢もあります。
医療機関以外の現場だと、一般企業・介護施設・学校や保育園・フリーランスなどのフィールドがあります。
一般企業
ここ数年の動向として、一般企業からの看護師の求人も増加傾向。
求人の内容としては、企業内の保健師・看護師、コールセンター、CRA(臨床開発モニター)やCRC(治験コーディネーター)など、医療従事者としての経験が重要視される仕事です。
介護施設
介護業界ではデイサービス、訪問入浴、有料老人ホームなどが主な職場になります。
こちらはやや医療的な業務が含まれることもあるため、看護師業務はもうしたくない‥という方には不向きかもしれません。しかし、体力的・精神的な負担は病院時代よりもはるかに軽いと思います。
超高齢化がますます深刻化する日本では今後も需要が高く、職場も増えることが確実に予想されますので、高齢者介護や介護予防という点に興味がある方にはおススメのフィールドです。
学校や保育園
また、求人数は少ないですが中高の保健の先生や保育園の園内看護師としての需要もあります。
忙しい病院勤務とは異なり、ある程度は自分のペースで進めることができる業務内容でしょう。
しかし看護師は基本的にその職場に一人ということが多いので、臨機応変な対応ととっさの判断力、責任感が求められやすい職場でもあります。
フリーランス
フリーランスとしての働き方ですが、例えば絵が得意な方はイラストレーターとして医療ジャンルの漫画やイラストを描くなどして収入を得ています。また文章が得意な方は、ライターとして看護や医療分野の原稿執筆を行っています。
これまでの経験や専門的知識を活かしながら自分の得意とする分野で活躍する、という働き方ですね。
人間関係のわずらわしさは比較的少ないですが、自由な働き方ゆえに収入が安定しにくいという現状もあります。
看護師から他職種への転職を成功させるコツ
看護師から他職種への転職は十分に可能とお伝えしてきましたが、勢いだけで転職活動を進めていくのはおすすめできません。
他職種への転職の際には次の3つのポイントを押さえておきましょう。
看護師から他職種への転職を成功させるポイント
- 一時的な感情で決めない
- これまでの人生経験や年齢を考慮して、無理な転職ではないかをよく考えてみる
- 転職先が長く勤められるかどうかを考える
これからの自分の人生をどうしていきたいのか、生活はどうするのかなどをきちんと考えて転職に踏み切ることが重要です。
悩んだら家族や友人に意見を聞いてみるのも良いと思います。
看護師から他職種への転職を成功させるコツ:まとめ
今回は、看護師から他職種への転職をテーマに考えてみました。
看護師の転職と一言で言っても、色々な働き方や選択肢がありますよね。資格をもっているからと言って必ずしもその仕事で働かなければいけない、ということは決してありません。
上で触れた「他職種への転職の際の3つのポイント」を頭の中に置いて、自分の将来について考えていきましょう。
皆さんが自分らしく働ける仕事や職場が見つけられるように願っています。